症状について
月経前に体やこころの症状が出現する方は多く、女性の20-50%が月経前症候群(PMS)と言われています。
その中で特に精神症状や身体症状が重いものが、月経前不快気分障害(PMDD: Premenstrual Dysphoric Disorder)であり、PMSのおよそ3-5%の方がPMDDに該当すると考えられています。
PMDDの方では、月経周期と関連して月経前1-2週間前からはじまり月経開始後に消失する、著しい抑うつ気分、著しい不安、著しい情緒不安定などの症状を認め、そのために家族や恋人との関係や職場での対人関係などを著しく妨げることがあります。
原因について
はっきりとした原因は分かっておらず、環境要因、生物要因などが多因子で関わっていると推測されていますが、PMDDの方では、エストロゲン、プロゲステロンなどの女性ホルモンの変動が、ノルアドレナリン、セロトニン、GAGA等の神経伝達を変化させていることが分かっており、抑うつ症状や不安症状の発現につながっていると考えられています。
治療について
軽度~中等度のPMSの場合は、食生活の改善や定期的な運動などの生活習慣への介入や、漢方薬の使用、また婦人科で行うホルモン療法などにより症状が軽減することもありますが、PMDDに対しては近年多くの研究論文において、脳内のセロトニン系に作用するうつ病への治療薬の一種であるSSRIの有効性が示され、第一選択薬として考えられるようになっています。
通常SSRIは、うつ病などの他疾患では継続して使用することが一般的ですが、PMDDについては、黄体期のみの間欠投与も継続投与と同等の有効性を認めることが知られており、まず ①排卵〜月経開始までの黄体期のみの使用を検討した上で、病状により ②1ヶ月を通しての使用 ③1ヶ月を通して使用するが黄体期のみ増量 などの投与方法についても医師と相談しながら検討することになります。
また、症状や程度により、抗不安薬や漢方薬などを単独または併用して使用することもあります。