症状について
日常生活における様々なことをきっかけとして、気分が落ち込んだり、憂うつな気持ちになることは誰しも経験することだと思います。しかし、原因がない、もしくは原因が解決した後も抑うつ症状が長く続く場合はうつ病を疑う必要があります。
うつ病では人間の精神機能である、感情・意欲・思考の3つの面すべてでの活動性が低下した状態ともいえます。さらに、食欲不振、不眠、疲労感、頭痛、肩こりなど様々な身体症状を伴います。
アメリカ精神医学会の定めた診断基準であるDSM-Ⅳでは、以下の9つの症状が挙げられています。
主なうつ病の症状
- 抑うつ気分
- 興味と喜びの消失
- 食欲の減退、体重の減少
- 不眠
- 焦燥または制止
- 気力の減退
- 罪責感
- 思考力と集中力の低下
- 自殺念慮
原因について
うつ病の原因については、他のこころの疾患と同じく、まだ十分には解明されていませんが、うつ病の方では、脳内の神経伝達物質のうち、「セロトニン」や「ノルアドレナリン」などの量が減少していることが知られています。
また、実際に現在の抗うつ薬の多くは、神経同士の接合部であるシナプス間隙での「セロトニン」や「ノルアドレナリン」の濃度を上昇させる作用から、抗うつ効果を発揮していると考えられています。
ただし、うつ病では、個々の方で、なりやすい素因 だけでなく、心理的要因や社会的要因などが複雑に関係し、疾患に影響していることも多く、様々な要因をトータルで考え、治療につなげていく必要があります。
治療について
うつ病の治療は症状の程度にもよりますが、中等度以上の場合は、休養と薬物療法の両方が中心となります。抑うつ症状のきっかけとなった問題がある場合はそれらの環境調整を行い、十分に休養をとり治療に専念できる体制を整える必要があります。
治療開始後は症状の改善の程度に応じ、生活環境やリハビリテーションに対してのアドバイスを行いながら、病状の安定、再発の予防などに努めていくことになります。
また、毎年秋から冬にかけて、抑うつ症状が出現し、春頃には自然と症状が消失するというサイクルを繰り返す、季節性うつ病(Winter Depression)の場合は、日照時間の不足が原因の一つと考えられており、高照度光療法を行うこともあります。
薬物療法について
うつ病の薬は、大きく分けて開発された順に
- 三環系抗うつ薬
- 四環系抗うつ薬
- SSRI
- SNRI
- NaSSA
などがあります。新しい世代の抗うつ薬である、SSRI、SNRIなどはシンプルな作用機序であることから、以前の抗うつ薬よりも比較的副作用が少ない特徴があります。そのため、現在第1選択薬としては、SSRI、SNRI、NaSSAなどを使用することが一般的となっています。