症状について
社会不安障害(SAD: Social Anxiety Disorder)をもつ人は、会議など人前での発表、初対面の人や権威のある人との面談・会話のときに、不安感や恐怖感を過大に感じてしまい、緊張と共に、動悸、大量の汗、顔が赤くなったりといった症状が現れます。
誰しも、そうした場面では、緊張や不安を感じるものですが、従来、対人恐怖症、赤面症、あがり症などと言われていた症状が、SADの人では強いこともあり、そういった社交的場面を避けるようになり、社会的生活に支障がでるようになります。症状が慢性化すると、仕事や学業の中断や、うつ病、アルコール依存などの精神疾患の合併を引き起こすことがあり、治療が必要な疾患とも言えます。
また、SADの生涯有病率は3-13%と言われ、決して特別な疾患ではありません。思春期~成人早期にかけて症状が出現するといわれていますが、医療機関を受診する人は少ないと考えられており、30代以降に仕事上、管理的業務を行うようになり、人前で話す機会が増えることで問題が明らかになり、受診にいたる場合もあります。
原因について
はっきりとした原因は分かっていませんが、性格傾向、生育歴、ストレス要因などを含めた、心理社会的要因や不安や恐怖の感じやすい等の生物学的要因など、いくつかの要因が複合的にかかわり発症すると考えられます。
SADの方では、神経伝達物質であるセロトニンやドーパミンの機能低下や、脳で情動や記憶を司る、扁桃体といわれる部位の活動の活発化を認め、それらが不安や恐怖を引き起こしていると考えられています。
治療について
主に薬物療法や精神療法などがありますが、薬物療法としては、抗うつ薬の一種であるSSRIや抗不安薬、β遮断薬などを使用します。また、呼吸法やリラクゼーション法など、不安症状への対処法を指導したり、段階的にあえて不安症状を起こす場面に身をおいて慣らしていくという、暴露療法などを必要に応じて行います。
日常生活や社会生活全般において、症状が出現する場合はSSRIや抗不安薬の継続使用を検討し、プレゼンテーションや会議の場面など特定の場面が主として問題となる場合は、緊張が起こる場面の頻度によっては暴露療法を検討したり、抗不安薬などを頓服的に使用することもあります。